– 目的地なき全力疾走の罠
変わる時代、問われる経営の本質
懸命に事業を営んでおられる経営者の皆様へ。
かつてのように「真面目に仕事をしていれば、お客様はついてくる」という時代は、終わりを告げました。
少子高齢化の大きな波の中で、これまでのやり方をただ漫然と続けていては、生き残ることすら困難な時代に突入しています。
「性能が良ければ、腕が良ければ仕事は来る」という過去の常識だけでは、激化する弱肉強食の荒波は乗り越えられません。
毎日汗を流し、誰よりも努力しているはずなのに、なぜか成果に結びつかない。そう感じてはいないでしょうか?
その根本的な原因は、あなたの努力不足ではありません。
「目的地も決めずに全力疾走していませんか?それは理想からの離反かも?」
問題は「努力の量」ではなく「努力の方向性」にあるのです。
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では、成功する経営者は、一体どのようにして正しい方向に努力を集中させているのでしょうか。
1. 成功へのコンパス:未来から現在を考える思考法
多くの人が陥りがちな間違いは、「今の視点から何をすべきか」を考えてしまうことです。目の前の課題や日々の業務に追われ、場当たり的な対応に終始してしまうのです。
しかし、成功する経営者は全く逆の発想をします。彼らは、未来から今を考えるのです。
これは車の運転に例えると非常に分かりやすいです。私たちは車に乗るとき、まず何をするでしょうか?闇雲にアクセルを踏む人はいません。必ず、カーナビに「目的地」を入力するはずです。目的地が設定されて初めて、そこへ至るための最適なルート(=今やるべきこと)が明確になるのです。
ビジネスも全く同じです。
あなたのビジネスの目的地は、明確に言語化できますか?
3年後、5年後、あなたの会社はどこに辿り着いていたいのか。それを具体的に描くことこそが、すべての戦略の出発点となります。
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この「目的地」がいかに重要か、具体的な事例で考えてみましょう。
2. 【具体例】あなたの施策は、目的地と一致していますか?
ここに、一軒の「売れないレストラン」があるとします。このレストランの課題を解決するために、流行りのインフルエンサーマーケティングに飛びつくのは、果たして正しいのでしょうか?
答えは「目的による」です。レストランの収益モデルには、大きく分けて2つの方向性が考えられます。
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A.目的:通りすがりの一見客を狙う場合
最優先するべき施策:認知度向上のため、目立つ立地への移転や看板の設置
B.目的:熱心なリピーターを狙う場合
最優先するべき施策:顧客満足度とブランド強化(味、サービス、体験価値)
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ご覧の通り、目的が違えば、やるべきことも全く変わってきます。
一見客がターゲットなのに、常連客向けのサービス向上にリソースを割いても効果は薄いでしょう。逆に、リピーターを増やしたいのに、広告費ばかりかけても意味がありません。
あなたの会社が今、時間と資金を投じている施策は、本当に「目的地」への最短ルートを指し示しているでしょうか。
Instagram等に懸命に不慣れな動画を作成して流し、一見さんの目につくようにする努力は、中小工務店にとって本当に必要な努力なのでしょうか。
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では、この最も重要な羅針盤を持たずに走り続けると、その努力はどのような悲惨な結末を迎えるのでしょうか。
3. 盲目的な努力がもたらす最悪の結果
目的地を定めずにビジネスを懸命に進めることは、いわば「宛なしで高速道路に乗るようなもの」です。
どこに向かっているのかも分からず、ただひたすら燃料(経営資源)を消費し続ける危険な状態と言えます。
最も恐ろしいのは、「早く走れば走るほど、目的地から遠ざかるかもしれない」という皮肉な事態です。
間違った方向に全力で進めば、当然ながらゴールは遠のく一方です。
これは単なる「頑張りが無駄になる」という精神論の問題ではありません。
あなたの会社の貴重な経営資源である時間、資金、そして社員の情熱を、本来行くべきではない場所に浪費してしまうという、極めて重大な経営課題なのです。
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では、この負のスパイラルから抜け出し、現状を打破するためには、具体的に何をすべきなのでしょうか。
4. 突破口を見出すための、唯一にして絶対の原則
これまでの議論から、進むべき道は非常にシンプルです。現状を打破し、成功への道を切り拓くためのアクションは、たった2つのステップに集約されます。
「突破口を見つけたいなら、まずはどこに向かうかを決める。そして、やるべきことに一点集中する。」
この原則に従い、以下の手順を実行してください。
- 第一に、自社の「目的地」を明確に定義する。
- 3年後の売上規模は?
- 地域でどのような存在になりたいか?
- どんなお客様に、どのような価値を提供していたいか?
- これらの問いに、具体的かつ明確に答えられるまで思考を深めてください。
- 第二に、目的地到達に必要なことだけに「一点集中」する。
- 目的地が決まれば、やるべきことと、”やらないこと”が自ずと見えてきます。
- 限られた経営資源を、最も重要な一点に集中投下するのです。
これが、あなたの会社が停滞から抜け出すための、唯一にして絶対の道筋です。
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結論:過去の常識を捨て、未来を描く経営者へ
がむしゃらに頑張ること、長時間働くことが美徳とされた時代は終わりました。
それは「過去の常識」です。
これからの経営者に求められるのは、未来から逆算して「今、何をすべきか」を冷静に見極める戦略的思考力です。
ただ走り続けるのではなく、一度立ち止まって、コンパスを確かめる勇気を持ってください。
最後に、改めてお伺いします。
「あなたの会社は、どこに向かっていますか?」

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